「シリカ」「カーボン」ってナニ?ロードスポーツ2ついでに説明

ダンロップのロードスポーツ2が発売されて、前回のブログでご紹介いたしましたので、そのついでにイロイロと、、、。

ダンロップ「ロードスポーツ2」について

そこで「カーボンコンパウンド」とか「シリカコンパウンド」とか書きましたが、「それナニ?」という方がいらっしゃったので、、、以下、例によって長ったらしいですが興味が有る方はぜひ。

 

ゴムは添加剤と化学処理で性質が変わる

タイヤのゴムはベースとなる「天然ゴム(NR)」と、「合成ゴム」例えばブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、その他が、単体もしくは任意に混合されてタイヤの各部に適材適所で使用されます。

さらに油やレジン、硫黄化合物(加硫用)とかシランカップリング剤、シリカ(二酸化ケイ素粉末≒ガラス)、カーボン(黒鉛粉末)などを練って混ぜて、熱処理して科学結合しています。

シリカ粉末=基本的に白いだからシリカ100%タイヤは本当は白っぽい。それを着色で黒くしている。
シリカコンパウンドカーボンコンパウンドバイクタイヤ添加剤

カーボンコンパウンド=基本的に黒い=カーボン比率高いほどタイヤは黒い
シリカコンパウンドカーボンコンパウンドバイクタイヤ添加剤
なんでこんな面倒臭い事をしてるかってぇといろんなものをゴムに混ぜると性能がアップするからです。でもただ練って混ざってるだけでは無く、しっかり化学処理されて結合しています。

 

シリカは低温向きでカーボンは高温向き(※あくまでも一般論)

超~~~大雑把に言って許されるならば、シリカコンパウンドタイヤは低温域で性能を発揮しやすくカーボンコンパウンドタイヤは高温域で性能を発揮しやすい特性です。

だからレース用タイヤはカーボンコンパウンドが多いです。

一方シリカコンパウンドタイヤも技術が向上して高温域での熱ダレが発生しづらく成ったので、最近の公道用ハイグリップタイヤでは「100%シリカコンパウンド」なんてのも実現してます。

例としては、メッツラーのハイグリップタイヤ「M7RR」のフロントがシリカ100%コンパウンドですね。リアはセンター70%シリカで、両サイドが100%シリカだったような、、、。

 

番外編「もしもスリックにスタッドレスのゴムを使ったら?」

詳しくは上記の表題を元にググって欲しいんですが、スタッドレスタイヤをスリックにして溝を無くしても、実験用圧雪路の上を普通にスラローム出来てしまう!!!記事が見つかると思います。

それくらいコンパウンドは重要で、メーカーの技術もそんな驚きのレベルに達している査証では無いかと、、、。

 

ピレリのディアブロロッソコルサを見てみると、、、

サイド(左側)はカーボン系、センター(右側)シリカ系で色が違うっすね。

シリカコンパウンドカーボン系ロッソコルサ

左側はカーボン由来の黒。右側はシリカ系ゴムが白いため黒く着色した黒。ってとこでしょうか?だから微妙に色が違うと。

 

化学処理の例。加硫ってナンやねん?

上記で硫黄化合物と有りますが、それを入れるとどうなるのかという説明。

例えばポリ袋とかビニール袋的な物を手で引っ張ると「ズルズルズル、、、」と伸びて戻らなくなりますよね?

それはC=炭素だのH=水素だので出来た構造がずれて行き、もとに戻らないからなんですけど、それをシッカリ結合して簡単にずれないようにすれば、また元の形に戻るようになります。

で、そのCだのHだのがずれないように手をつないでいく「橋渡し役が硫黄(S=サルファー)」です。具体例としてはタイヤの様なゴム弾性が有る物はイソプレン分子100個につき、架橋が一箇所くらいみたいです。

で、その橋渡し処理の事を「架橋=かきょう」と言い、架橋の一種で硫黄や硫黄化合物を用いた処理を「加硫=かりゅう」と言います。二硫化炭素に溶けづらい不溶性硫黄化合物とかが使用されてるみたいですね。

で、加硫するとどうなるの?

例として生ゴムは弾力がありつつ、引っ張り続けるとポリ袋みたいにズルズルのびて完全には戻らなくなります。で、輪ゴムは少し加硫してある天然ゴムで、綺麗に元に戻りますけど、まだそんなに加硫度は高くなく丈夫じゃない、、、と。

小中学でやった静電気の実験で使った事ありますかね?真っ黒なエボナイトはプラスチックみたいに硬くて丈夫ですが、コイツがゴムの加硫度100%近い状態です。全体の30~40%が硫黄なんですな。まぁつまり加硫でゴムはここまでカチコチに硬く丈夫に成ると。

エボナイト ゴム 加硫 バイクタイヤ

タイヤの加硫度は物によって違うでしょうが、加硫度の過不足は、特に発熱性・耐摩耗性・耐候性に大きく影響が出るようです。

ちなみに1839年の冬に偶然加硫を発見したのは、アメリカの発明家「チャールズ・グッドイヤー」さんで、硫黄化合物の薬品、、、と言うか硫黄粉末そのものが付着した天然ゴム底の靴を、研究室のストーブの前に置いておいたら、やたらめったら靴が跳ねるようになって発見したらしいです。

で、その発明者の名前を採用したのが、グッドイヤーさんとは直接関係がないアメリカのタイヤメーカー「グッドイヤー」で、チャールズ・グッドイヤーさんの息子「チャーズル・グッドイヤー・ジュニアー」さんが靴の製法「グッドイヤーウェルト」を発明すると。

 

有機物と無機物は接着し辛い!シランカップリングってナニ?

上記でシリカだのカーボンだの書いてましたが、シリカ入れるとどうなるのかと言う、その一例としてシリカコンパウンドを使用する場合の「シランカップリング」を説明します。

まずシリカを入れるとカーボンと同様ゴムが丈夫に成るんですが、一般論として高温域方向に特性が良くなるカーボンと違い、シリカは低温域方向に特性が良くなるので、一般的な公道用タイヤはシリカコンパウンドが増えてます。

そのシリカとゴムは練って混ぜるだけではダメで、化学プロセスを通してシッカリと科学結合させています。

なぜなら有機物と無機物はくっつきにくいと言う性質が有るからです。

でタイヤに使う一般的なゴムは有機物でシリカは無機物なんで、モロにこの問題にぶち当たる訳です。

まず有機物と無機物の例を上げます。ココらへんは19世紀の科学者「フリードリヒ・ウェーラー」が有名ですかね。

「有機物は化学合成出来るから、生物活動に依存しなくてもOK」という「生気説=せいきせつ」の否定あたりの話は、高校の科学で習った記憶も有るんじゃ無いでしょうか?

詳しくは以下のウィキペディアから調べまくって下さい。

ウィキペディア フリードリヒ・ウェーラー 
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%92%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%BC

ゴム=有機物
一般的に炭素を含んでいて熱すると燃えるか焦げる物の総称。例えばゴム、砂糖や木材、尿素、などなど。
シリカ=二酸化ケイ素=無機物
炭素を含んでない。もしくは含んでいても一般的に燃えない焦げない物の総称。例えばシリカ、鉄、炭酸水素ナトリュウム(重曹)、シアン酸アンモニウム、などなど。

この二種類は性質が違う(お互いに握手出来る手を持っていない)ため、練って混ぜるだけではくっつきづらい性質があります。で、その仲介約として「シランカップリング剤」と言うケミカルを使います。ココらへんは、接着剤にも使用されている技術ですね。

このシランカップリング剤は意外に身近な所で使われていまして、金歯とかセラミック被覆みたいな歯の被せ物を歯と接着する時に使ったりします。

歯(例・象牙質)=有機物  金歯=無機物

この2つを「科学的に」接着するには、、、

歯(有機物)シランカップリング剤金歯(無機物)

と言う感じでシランカップリング剤の仲介が必要になります。他にはリン酸など前処理が必要な場合があります。それは相手方の相性により変わります。

 

で、ダンロップロードスポーツ2のトレッドは、、、

100%合成ゴムで天然ゴムのミックスは無し。そしてシリカコンパウンドです。これも技術の方に確認したので間違い無しです。

 

タイヤ作りはメンドイし難しい

そんなこんなで、いろんな事をしまくって、やっと1個のタイヤが出来上がるんですよ~~~!みたいな事は少しくらい皆様に伝わったでしょうか?

ハッキリ言って、こんな事を知ったところで1秒も速く成るとは思わないし、僕も何故ここまで必死こいて皆さんにお伝えしたいのか?と言うその情熱の根源も良くわからないんですが、、、

このブログを最後まで読んで頂いた方の心の温度が0.1℃でも上がってくれれば、それが僕の救いなのかも知れません。

 

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