東日トルクレンチ「MTQL70N」校正終了。ネジの注意点と水素脆化

僕やスタッフが日々使用している信頼のブランド、東日社製のトルクレンチ「MTQL70N」が校正終了して帰って来ました。

10N~50Nあたり用に、この「MTQL70N」だけでも3本。その他2本で5本のトルクレンジを使い回し。

シャフト用のデカイ東日が2本で、ドゥカティの240N用が1本。

合計8本のトルクレンチを使い分けてます。まぁ同じトルクレンチを重複して多めに持ってないと校正に出せないですし。

東日トルクレンチ「MTQL70N」校正終了 バイクタイヤ交換東京モトフリーク

⬇トルクをプリセットする時に回すダイヤルの感触が劣化したり、、、、、、

東日トルクレンチ「MTQL70N」校正終了 バイクタイヤ交換東京モトフリーク

⬇既定値に達した時に、首振りヘッドから発生する「カチッ」って言うクリック音が劣化して、なんとなく気持ち良さが無くなって来たんです。

東日トルクレンチ「MTQL70N」校正終了 バイクタイヤ交換東京モトフリーク

 

トルクの誤差は、、、、、、

10N(ニュートン)で誤差1.2%

10Nくらいの弱さは6ミリのネジ、いわゆる「M6」で使うことが多いですが、外装や電子部品の取り付けネジが多いですかね。

例えばヤマハMT系のフロントホイールセンサーのネジ。もしくはフロントフォークのアクスルシャフトを固定するアプリリアトゥオーノの「フォークボトムピンチボルト」。

ただしドゥカティパニガーレなんかはM6で17Nくらいが純正指定ですけど、M6ネジが締め過ぎで傷んでるのが多くて、ちょっとオーバートルクじゃないかな?と思ったりする時があります。

「パニちゃんのM6ピンチボルトは健康なネジを清掃潤滑した場合に限り」10N~14Nくらいでイイんじゃないっすかね?

機械構造用炭素鋼のS45Cとか、クロモリ(クロームモリブデン鋼)のSCM435の調質あたりだと、ネジ強度区分で弱くても8.8から10.9~12.9はあるんで、そこら辺の高信頼性のあるネジなら全然問題なしでございます。

ただし12.9みたいな高強度区分ネジが絶対。と言っている訳でも無いです。12.9みたいに硬い材質は反面折れやすい事もあるんで、大切なのはバランスです。

んで話は戻って17N~22Nあたりの例は、17N~18Nあたりがキャリパーパッドピンの固定が多く、19Nはオーリンズのフォークボトムピンチボルト、20N外車のフォークボトムピンチボルト、22N~23N国産のフォークボトムピンチボルト。

M8のキャリパーボルトだと25N~強くて35Nが多いかなぁと。あ、リアキャリパーは15Nとか弱めがありますけどね。

あ、そうそう。

カワサキZX9RとかホンダCBR1100XXブラックバード、スズキGSF1200~1250あたりのM8キャリパーボルトは、8ミリしか無い細さの割に強トルクで締めてあり、古さも手伝って傷んだネジが目立つのでチェック・交換される事をオススメします。

40Nで誤差0.6%。スバラシイねっ!

弱すぎでもなく強すぎでもない、守備範囲中央辺りの40Nは、流石に精度が高いっすね。

さてM10~M12とかの太いネジだと、カワサキのキャリパーボルト34Nからホンダ1000ダボの45Nとか。リンク周りの60N前後なんてのがあります。が、、、バカ締めは嫌なのでリンクのトルクは様子見で決定しますけど。

このレンチで70Nなんて規定ギリギリは使用しません

誤差13%と大きいし寿命も縮まるし。

あとは、ネジの強度区分や材質、熱処理、健康度などで調整するとよろしいかと。

と言うよりバイクでも車でも機械で有ることには違いは無いんで、一度は雄ネジ・雌ネジの材質や熱処理、潤滑の仕方などを、JISの規定を覚えてみることをおすすめします。

ネジやバネは機械いじりの基本中の基本、イロハのイにして、最も奥深いジャンルのひとつだと思います。「確か先輩か誰かがそう言ってたと思う。カモ、、、」みたいな、あまりいい加減な都市伝説で作業すると危ないですね。

 

ネジはトルクで閉まるんじゃ無い!

あ、そうそう!

トルクと軸力の関係は微妙かつ重要なんで、早とちりしないよう良く勉強して理解して欲しいと前提しますが、、、

よく勘違いしている方が多いので、誤解を恐れずに思い切った言い方をすると、、、「ネジはトルクで締まっている訳じゃ無い」です。

ネジにトルクを掛けて締めると、ネジがゴム紐みたいに伸びて「それが縮むチカラ」これを「軸力=じくりょく」と言い、その軸力で締まっているんです。

だからもしネジが錆びていたり、伸びて精度が落ちていたり(塑性変形と言う)、材質や組み合わせが不適切(電食・摩擦・強度の問題)だと、当然おなじトルクで締めても規定の軸力が発生しません。もしくはオーバーします。

ましてやサビや切り屑、ゴミを掃除せずに噛み込んでいるのは論外!トルクレンチを使う意味が全く無いです。

だから「ネジの状態を精査せずに整備マニュアルの数値だけが絶対にして唯一の正解!」と言い切ってしまう純正信者の方には、ココらへんを根拠にして疑問を感じるから、議論になり僕の説得タイムに成ることがあります。

大切なのは結果の軸力で、手段のトルクでは無いです!

ひどいネジになると、頭が浮いてて締まって無くても、トルクレンチが「カチッ」とか言っちゃうんで、そこいら辺の管理は慎重にお願いいたします。

エンジンなんかに使う「塑性ボルト」みたいにやや特殊ネジは別にして、あくまでも「トルクは軸力を発生させる目安くらいに思って」、雄ネジや雌ネジの状態や組み合わせ、材質や熱処理の有無、清掃潤滑などのチェックを心がけないと危険だと思います。

そして、あまりにも規定値とかけ離れたトルクでイイ感じになった場合は、なにか問題が発生していないか、もしくは勘違いしていないか否か、一度作業を停めて熟慮することをオススメします。

 

サンポールとかの錆落とし(酸洗)はNG!

この酸洗(さんせん)ってヤツ。

釣りで有名なユーチューバーさんがやってたの思い出したんで書くんすけどね、、、

ネジや刃物などの炭素鋼や低合金鋼、刃物鋼の例なら白紙とか青紙。その他クロモリ、ステンレス、ダイス鋼、ドリルのハイス鋼など、いわゆる特殊鋼や高張力鋼(ハイテン=ハイテンシル・スチール)等の高信頼鋼をサンポールなどの酸で錆落とししちゃダメです。

コレをやると鋼材に水素が染み込んで「水素脆化=すいそぜいか」という現象が発生し、脆くなり危険なのでNGです。

特に高炭素鋼や高合金鋼など、より高級、より特殊な鋼材ほど、一般的に水素脆化の影響をうけやすいので要注意ですね。

具体的には発生した水素H、この段階ではH2分子には成っていませんが、鉄鋼に染み込んで時間が経ちH2分子になると、体積が増えてその鉄鋼素材の引張強度を上回って来ます。

そんなミクロの世界を金属顕微鏡やSEMでチェックすると、極微小な割れの白点(はくてん)が発生しており、それが高密度になると毛割れ(けわれ)になり、いずれ大きなひびへと集合成長し、破壊につながります。

酸洗した瞬間はキレイだし強度も有るけど後々忘れた頃に強度が落ちてくるから気づきにくく危険です。ブレーキやホイールハブボルトなんかに使用したら目も当てられません。

これを「遅れ破壊=おくれはかい」と言います。

ノミとか包丁を酸洗すると、ポロっと刃先が欠けやすくなるんでダメっすね。

強度復活の対策として水素を追い出す加熱処理でベーキング処理って言うのがありますが、薄物ならまだしも厚物は時間が経つと中央方向にも水素が染み込むんで、ベーキング処理しても効果が薄くなる傾向があります。

でもまぁそんなこと普通皆さんは出来ないと思うんで、傷んだネジはメンテや思い切って交換が基本です。

これ以上は話が長くなるので、ここらへんで終わります。

 

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